ずいぶん昔のテレビドラマですが、今もずっと心に残っているドラマがあります。
あのバックに流れるBGMもよかったなぁ。昭和41(1966)年に放送された『氷点』です。
こりゃまた古いドラマですね。何度かリメイクもされているようですが。芦田伸介さんと新珠三千代さん、内藤洋子さんの演技にひきこまれましたわ。
芦田伸介主演「氷点」あの渋い演技のセリフや仕草が活きたドラマだった
『美しき十代』第9巻第1号、学習研究社、1967年1月1日。, 日本国著作権消滅/米国フェアユース, リンクより
芦田伸介、という役者が出演していた「氷点」を見たくなる理由。
それは、あの演技力にあるように思います。静かなのになんとも言えない存在感。
何度かリメイクされているのですが、もう一度見てみたいと思うのは、一番最初にドラマ化された
芦田伸介さん、新珠三千代さん、内藤洋子さんが出演しているあの氷点です。
芦田伸介さんは、とても渋くてカッコいい医師でした。
妻(新珠三千代)が医師仲間である男に恋をしていることを嫉妬している様子は、そのセリフのトーンや視線、仕草から、にじみ出ていました。
苛立ちや焦燥を寡黙な中でもしっかりわかる演技でした。
と同時に陽子(内藤洋子)のよきお父さんでもありました。
娘をいじめ抜く義母役を透き通るような冷酷さで演じた新珠三千代さんの葛藤
一方、陽子を自分の娘を殺した殺人犯の娘であることから、いじめ抜く義母を演じた新珠三千代さんは、たたずまいが美しく品があり凛としていました。
良妻賢母を貫こうという気持ちと、夫以外の男に惹かれていく自分。
そんな浮気心を責めつつも、なお惹かれていく女の葛藤が伝わってきました。
犯人の娘を育てる苦しさと憎しみとなんそも言えぬ焦燥感が感じられました。
いじめられてもいじめられても健気に生きる陽子の姿に涙せずにはいられない
忘れられないシーンは、やはり陽子(内藤洋子)卒業式の答辞を読むシーンです。
夏枝に答辞は白紙のものとすり替えられていたそのとき、陽子がとっさに自分の言葉を述べたあのシーン。
「このように突然、まったく予期しない出来事が人生には幾度もあるものだと教えられました」で始まるその言葉。
まだ続きます。
「大人の中には維持の悪い人もあるのではないかと思います。でも私達はその意地悪に負けてはならないと思います。
どんな意地悪をされても困らないぞ、という意気込みが大切だと思うのです。泣かせようとする人の前で泣いては負になります。そのときにこそ、にっこり笑って生きているだけの元気を持ちたいと思います。」
涙が溢れてきます。こんなに頑張らなくてもいいのに、と。お父さんに言いつけることもなくがんばりすぎている陽子に胸が締めつけられました。
私だったら、と子どもだった私は夏枝にすごく腹が立ちながら憤りながら見ていました。
鳴り止まぬ拍手喝采。会場で拍手を送る市原悦子さんの姿が印象的だし、彼女がいてくれてホッとしたことを覚えています。
私なら、絶対、このおばさん市原悦子さんに義母の仕打ちを言いつける!
その時の、夏枝の怒りに満ちた氷の表情も忘れられません。
「氷点」というドラマを氷のような冷たさで演じきった新珠三千代さんって、すごすぎる! と今更ながらに思います。
何度もリメイクされているドラマですが、やはり昭和41年にドラマ化されたこの作品の配役にまさるものはないのでは?
ドラマの配役はベストだったように思います。
「許す」ということはいったいどういうことなのか?
これでもか、これでもか、という苦しみを味わわされても健気に生きる陽子(内藤洋子)。
義母(新珠三千代)に壮絶なるいじめを受けても、明るく優しい気持ちを失わずに健気に生きる姿に胸がしめつけられます。
そんな妹を、見守る唯一の兄の存在は、唯一の救いのようでもありました。
と同時に、妹への恋に苦しむ兄の気持ちもなんだか見ていてハラハラするものがあり、切ない気持ちになったものでした。
罪を許すということは、どういうことなのだろう。
この小説のテーマは、許すということであると感じます。
怒り、憎悪、嫉妬、そんなものが、渦巻く中で生きる人々が実に巧妙に描かれている文才は、書かれてから何年も経つのにとても新鮮。
血がつながらないとはいえ、兄が陽子を思う気持ちにはドキドキします。
義母から憎しみを向けられながら、生きていく辛さ。
こんなふうな目にあったときに、どう生きたらいいのか?
義母は義母で、どうしょうもない苦しみを抱えているわけで・・・。
その義母を愛する男の存在もまた、なんともリアルで。
考えさせられる小説でした。
ドラマに流れていた、BGM。
今もはっきりも覚えています。
もう一度見たいドラマです。
このドラマはツタヤディスカスで見ることができます。
【TSUTAYA DISCAS】「氷点」心理描写は、圧巻。読み応えあり!
三浦綾子さん著の『氷点』は、1964年12月~1965年11月まで朝日新聞の朝刊に掲載された小説です。
北海道・旭川が舞台。
愛娘が犯人に殺される、という壮絶なところから始まるそのストーリー。
三浦綾子原作のこの小説。
再読してみましたが、この小説の世界にぐいぐいと引き込まれてしまいました。
今読んでも新鮮。衝撃的でもあり、 心の中をえぐられていくような感覚にサスペンス要素もある?
それにしても小説を読んで、知りました。
こんなに心理描写が表されていたのだ、ということを。
コメント
すごい記憶力ですね。
私は、このドラマ、全然覚えてないんですが小山明子さんが母親役の時のは微かな記憶があるような・・・。
怖いお母さんって言う印象だけが残っています。
私の母が一生懸命、観てたような気がします。
「許す」って大事な事ですね。
だから私は復讐もののドラマは嫌いです。(^▽^;)
クニさん
コメントありがとうございます。
このドラマを覚えているのは、父が見ていて一緒に見ていたからと、
きっと再放送も見たのではないか、と思います。
小山明子さんは新珠三千代さんの次の女優さんですね。
こんなに何度もリメイクされているドラマ、ないですね。
復讐モノのドラマといえば、韓流ドラマはほぼ復讐ですね。
冬ソナが流行っていた時期は見ていなかったのに、最近、めちゃ見てしまっています。
ハマってしまっています。
インスタではいつもありがとうございます
三浦綾子さんの小説は「塩狩峠」、「海嶺」、「母」を読んでいますが「氷点」はまだでした。三浦綾子さんの代表作ですし読んでみたいです!
これまで読んできた作品では登場人物のブレなさが印象に残っています。
塩狩峠を初めて読んだ時は私も自分自身そのものに迷いが多く、大きな衝撃を受けたのを覚えています。
それと主人公が死んだと思った実母と会って、オムレツを作ってもらって食べる描写(母と会えた喜びと、この世にこんな美味しい食べ物があったのか!!!という感じ)がとても印象に残っています。
これらの作品との氷点との比較、そして氷点原作とドラマとの世界観の比較も感じられたらいいなと思います
こばやしのりふみさま
こちらこそいつもインスタでいいねをありがとうございます。
そしてこの度のコメント! とても嬉しいです。
早速読んでいただき感激しています\(^o^)/
三浦綾子さんの小説、塩狩峠、氷点、しか読んでいません。
「母」を読んでみたいと思いました。
塩狩峠は、胸の奥がえぐられたような感覚になったことを覚えています。
泣きました。
氷点、リメイクされていろんな方が演じていますが、物足りませんでした。
芦田伸介さん主演のこのドラマ、私もツタヤディスカスで見てみたいと思います。
YouTubeで見ましたが全ストーリーは見れないので残念です。